NFTアートを安全に始めるための最初の一歩:『準備』の全体像と注意点
はじめに:NFTアートの世界へ安全な一歩を踏み出すために
最近、「NFTアート」という言葉を耳にする機会が増え、「なんだか面白そう」「始めてみたいけれど、難しそう」「専門用語が多くて、どこから手をつけていいか分からない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、デジタルな取引は「安全なのだろうか」「騙されたりしないだろうか」といった不安がつきものです。
この記事は、まさにそういった疑問や不安をお持ちの、NFTアートに全く触れたことのない初心者の方に向けて書いています。NFTアートを安全に楽しむための、最初の「準備」に焦点を当て、その全体像と具体的なステップ、そして知っておくべき注意点を、専門用語を使わずに分かりやすく解説することを目指します。
この記事を最後までお読みいただければ、NFTアートを始めるために必要な最初の準備が何で、どのような流れで行うのか、そして安全に進めるためには何に気をつければ良いのか、その全体像をしっかりと把握していただけるはずです。
それでは、一緒にNFTアートへの安全な最初の一歩を踏み出しましょう。
そもそもNFTアートとは? なぜ『準備』が必要なの?
まず、「NFTアート」とは何か、そしてなぜ始める前に特別な「準備」が必要になるのかを、ごく簡単に説明します。
NFTとは、「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称です。これは、デジタルデータに「これは世界に一つしかない、あなただけの本物です」という証明書のようなものを付けられる技術だと考えてください。普通のデジタルデータは簡単にコピーできてしまいますが、NFTという証明書が付くことで、そのデータが「唯一無二のオリジナルの存在」であることを証明できるようになります。
そして、このNFTの技術は「ブロックチェーン」という仕組みの上で作られています。ブロックチェーンは、例えるなら「みんなで監視し合う、絶対に書き換えられないデジタルな記録簿」のようなものです。この記録簿に「このNFTアートの『本物』は〇〇さんが持っています」という情報が記録されることで、そのアートの持ち主が誰であるかをはっきりと証明できるのです。
NFTアートを購入したり、将来売ったりといった取引は、このブロックチェーン上で行われます。そして、取引の際に使う「お金」として、多くの場合「仮想通貨」が利用されます。最もよく使われるのは「イーサリアム」という種類の仮想通貨です。
さらに、ブロックチェーン上の取引には、「デジタルのお財布」のようなものが必要です。これが「ウォレット」と呼ばれるものです。ウォレットに仮想通貨を入れておき、それを使ってNFTアートを購入したり、購入したNFTアートを保管したりします。
つまり、NFTアートを始めるためには、ブロックチェーン上で取引を行うための「デジタルなお金」(仮想通貨)と、それを管理する「デジタルのお財布」(ウォレット)が必要になるのです。そして、日本円などの普通の通貨を仮想通貨に交換するための場所も必要になります。これが、これからご説明する「準備」が必要な理由です。
安全に始めるための『準備』全体像:3つのステップ
NFTアートを安全に始めるために必要な最初の準備は、大きく分けて3つのステップで構成されます。
まずはこの全体像を把握しましょう。
- ステップ1:仮想通貨取引所の口座を開設する
- 日本円を、NFTアート購入に使う仮想通貨(主にイーサリアム)に交換するための場所の準備です。
- ステップ2:ウォレットを作成する
- 購入した仮想通貨や、将来手に入れるNFTアートを保管・管理するための「デジタルのお財布」の準備です。
- ステップ3:必要な仮想通貨を用意し、ウォレットに入れる
- ステップ1で作った取引所で日本円を使って仮想通貨を購入し、ステップ2で作ったウォレットに送金する作業です。
この3つのステップを順番に行うことで、NFTアートを購入するための基本的な準備が整います。次に、それぞれのステップについて、安全に進めるためのポイントと具体的な注意点を解説していきます。
ステップ1:仮想通貨取引所の口座を開設する(安全な選び方と注意点)
NFTアートを購入するためには、まず日本円を仮想通貨に交換する必要があります。この交換を行うのが「仮想通貨取引所」です。インターネット上の銀行や証券会社のようなものだと考えてください。
安全な取引所を選ぶポイント
日本には様々な仮想通貨取引所がありますが、初心者が安全に始めるためには、以下のポイントを参考に取引所を選ぶことをお勧めします。
- 国内の、信頼できる大手取引所を選ぶ: 金融庁の登録を受けている、日本国内の大手取引所は、セキュリティ対策や利用者保護の体制が整っている場合が多いです。名前を聞いたことがある、テレビCMなども行っているような取引所から選ぶと安心です。
- セキュリティ対策がしっかりしているか確認する: お客様の資産を守るための対策(例:二段階認証、コールドウォレットでの資産管理など)をきちんと行っているか、取引所のウェブサイトなどで確認しましょう。
- 使いやすさ: 初心者にとって操作が分かりやすいかも重要です。アプリやウェブサイトの画面を見て、ご自身に合いそうな取引所を選びましょう。
口座開設の具体的な流れ
多くの場合、仮想通貨取引所の口座開設は以下のような流れで進みます。
- 取引所のウェブサイトやアプリから申し込みを行う。
- メールアドレスや電話番号を登録し、認証する。
- 氏名、住所、生年月日などの個人情報を入力する。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)を提出する。(スマホで撮影してアップロードするのが一般的です)
- 審査が行われ、数日後に口座開設完了の通知が届く。
ステップ1での安全に関する注意点
- 公式サイトであることを必ず確認する: 口座開設を申し込む際は、検索結果からではなく、ブックマークするなどした取引所の公式サイトにアクセスしているか、URLをよく確認してください。取引所を装った偽サイトに誘導される詐欺に注意が必要です。
- IDとパスワードを厳重に管理する: 設定したログインIDやパスワードは、使い回さず、安全な方法で管理してください。
- 二段階認証を必ず設定する: ログインや出金時に、パスワードに加えてスマートフォンアプリなどで発行される一時的なコードの入力を求める「二段階認証」は、不正ログインを防ぐために非常に重要です。必ず設定しましょう。
ステップ2:ウォレットを作成する(安全な種類と設定のポイント)
仮想通貨取引所で仮想通貨を手に入れたら、それを保管したり、NFTアートを保管・管理したりするための「デジタルのお財布」である「ウォレット」を作成します。
代表的なウォレットの種類
ウォレットにはいくつか種類がありますが、NFTアートの取引で初心者がよく使うのは「ソフトウェアウォレット」と呼ばれる、PCやスマートフォンのアプリとして使うタイプです。中でも「MetaMask(メタマスク)」は、NFTアートのマーケットプレイス(取引できる場所)との連携が簡単なので広く使われています。
ウォレット作成の具体的な流れ(MetaMaskの場合)
MetaMaskのようなウォレットアプリは、以下の流れで作成できます。
- MetaMaskの公式サイトから、使用しているブラウザ(Chromeなど)の拡張機能、またはスマートフォンのアプリをインストールする。
- アプリを開き、「新しいウォレットを作成」を選択する。
- パスワードを設定する。(ログイン時に使用します)
- 【最重要】シードフレーズ(リカバリーフレーズ)を記録する。
ステップ2での安全に関する最重要注意点:シードフレーズの管理
ウォレット作成時に表示されるシードフレーズ(多くの場合12個または24個の英単語の並び)は、あなたのウォレットを復元するために必要となる、最も重要な情報です。
- 【絶対に守るべきこと】
- シードフレーズは、絶対に、誰にも教えてはいけません。ウォレットの復元はシードフレーズさえあれば誰でも出来てしまうため、これが漏れるとウォレットの中身(仮想通貨もNFTも全て)を盗まれてしまいます。
- シードフレーズを、インターネットに繋がった場所に保管してはいけません。スマートフォンやPCのメモ帳アプリ、クラウドストレージ、スクリーンショットなどに保存するのは絶対にやめてください。
- シードフレーズは、紙に書き出して、誰にも見つからない安全な場所に保管してください。金庫に入れる、信頼できる家族と共有するなど、物理的な安全策を講じましょう。最低でも2箇所以上に分けて保管することも検討してください。
- シードフレーズを入力する際は、偽サイトに注意してください。ウォレットの接続や復元を求められた際は、そのサイトが正規のものであるか、URLをよく確認してください。シードフレーズの入力を求めるウェブサイトのほとんどは詐欺です。
シードフレーズは、たとえるなら「金庫の鍵」ではなく「金庫そのものを復元できる魔法の言葉」です。これさえあれば、たとえPCやスマホが壊れてもウォレットを元に戻せますが、同時に、悪意のある第三者に知られてしまうと全てを失います。この一点だけは、どれだけ強調しても足りません。
ステップ3:必要な仮想通貨を用意し、ウォレットに入れる
口座開設とウォレット作成が終わったら、いよいよNFTアート購入に使う仮想通貨を用意します。多くのNFTアートは「イーサリアム(ETH)」という仮想通貨で取引されます。
仮想通貨取引所でのイーサリアム購入
- ステップ1で開設した仮想通貨取引所の口座に、日本円を入金します。
- 取引所の取引画面で、「イーサリアム(ETH)」を選び、日本円を使って購入します。購入方法は取引所によって異なりますが、「販売所」形式であれば、表示されている価格で簡単に購入できます。
購入したイーサリアムをウォレットに送金
購入したイーサリアムは、最初は取引所の口座に保管されています。これを、ステップ2で作成したウォレットに送金する必要があります。
- 取引所の「送金」または「出金」メニューを選びます。
- 送金先として、作成したウォレットの「アドレス」を入力します。ウォレットアプリを開くと表示されている、
0x
から始まる長い英数字の並びがあなたのウォレットのアドレスです。これをコピー&ペーストして入力します。 - 送金したいイーサリアムの数量を入力します。
- 送金を実行します。
ステップ3での安全に関する注意点
- 送金先アドレスを正確に入力する: ウォレットのアドレスは、一文字でも間違えると、送金した仮想通貨が二度と戻ってこなくなります。必ずコピー&ペーストを使用し、送信前にアドレスの最初と最後をよく確認しましょう。
- まずは少額でテスト送金する: 不安な場合は、まずはごく少額(例えば1000円分など)のイーサリアムをウォレットに送金してみて、きちんと届くか確認することをお勧めします。問題なければ、残りの希望額を送金しましょう。
- 「ガス代」について: イーサリアムをウォレットに送金したり、後でNFTアートを購入したりする際には、「ガス代」と呼ばれる手数料がかかります。これはブロックチェーン上で取引を処理するために必要な費用で、取引の混雑具合によって変動します。ガス代がかかること、そして金額が変動することをあらかじめ理解しておきましょう。
準備が整ったら:次のステップへ
ここまでの3つのステップを完了すれば、NFTアートを購入するための基本的な準備は全て整いました。
- 仮想通貨取引所で日本円をイーサリアムに交換できるようになりました。
- イーサリアムやNFTアートを安全に保管・管理するウォレットを作成しました。
- 購入したイーサリアムをウォレットに送金できました。
あとは、NFTアートが売買されている「マーケットプレイス」にウォレットを接続し、お気に入りの作品を選んで購入するだけです。代表的なマーケットプレイスには「OpenSea(オープンシー)」などがあります。
具体的なマーケットプレイスの使い方やNFTアートの選び方、購入方法については、また別の記事で詳しく解説していきますので、ぜひそちらも参考にしてください。
NFTアートを安全に楽しむための全体的な注意点
安全に準備を進めることに加えて、NFTアートの世界に関わる上で全体的に気を付けていただきたい注意点があります。
- 価値の変動リスク: NFTアートの価格は、非常に大きく変動する可能性があります。購入したアートの価値が上がることもあれば、大きく下がることもあります。これは株式投資などと同様にリスクがあることを理解し、ご自身の判断と余裕資金で行うことが大切です。
- 詐欺への警戒を常に持つ: NFTの世界には、残念ながら詐欺も存在します。「必ず儲かる」といった甘い話や、見知らぬ人からのDM(ダイレクトメッセージ)、安易なリンクのクリックには十分注意してください。公式サイトや信頼できる情報源からの情報のみを信じるようにしましょう。シードフレーズや秘密鍵を聞き出すようなものは全て詐欺だと疑ってください。
- 焦らないこと: 最初から高額なNFTアートを購入する必要はありません。まずは興味を持った、比較的手に取りやすい価格の作品から始めてみるなど、ご自身のペースで進めることをお勧めします。
- 自己責任の原則: NFTアートの取引は、基本的に全てご自身の責任で行われます。ご自身の判断で行動し、分からないことは安易に進めず、しっかり調べてから行うようにしてください。
まとめ
NFTアートの世界は、新しい技術を使った刺激的な体験を提供してくれますが、安全に楽しむためには、最初の「準備」をしっかりと行うことが非常に重要です。
この記事では、NFTアートを安全に始めるための『準備』として、
- 仮想通貨取引所の口座開設
- ウォレットの作成
- 必要な仮想通貨の準備とウォレットへの送金
という3つのステップの全体像と、それぞれのステップで特に気を付けるべき安全に関する注意点について解説しました。
特に、ウォレットの「シードフレーズ」の管理は、あなたのデジタル資産を守るための要となりますので、この点だけは絶対に忘れないようにしてください。
NFTアートを始めるための最初の準備は、少し難しく感じるかもしれませんが、手順を一つずつ確認しながら慎重に進めれば、決して難しいものではありません。
この記事が、あなたがNFTアートの世界への安全な最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。焦らず、着実に準備を進めて、新しいデジタルアートの世界を安全に楽しんでください。